幸せな遅刻

マリエ:
遅刻癖のある女性

キミノブ:
遅刻癖のあるマリエの夫


マリエ「はぁ、ドキドキしちゃう。明日はキミノブさんとの初めてのデートだって言うのに。緊張しちゃって眠れないわ。でも寝過ごしちゃったら大変だし、早く寝なくちゃ……」

マリエ「はぁ、やっぱり眠れない。どうしようホントにもう寝なくちゃ、今何時かしら? あらもう夜中の二時じゃない! 明日起きれるかしら、不安になってきちゃった」

マリエ「はぁ、どうしよう本当にもう寝なくちゃ。夜中の三時過ぎちゃったわ。でも眠れそうにないわ。よしこうなったら明日の朝まで起きておこうかしら。そうね、もう開き直って起きちゃいましょう」

マリエ「はっ!……いつの間に寝ちゃったのかしら?あら外はもう明るいわ。今何時?もうこんな時間!キミノブさんとのデートに遅刻しちゃう!」

マリエ「ごめんなさいキミノブさん、一時間も遅刻しちゃって。私、昨日緊張しすぎて眠れなかったの。ほんとごめんなさいね。ものすごく待ったでしょう」

キミノブ「いや、実は僕も遅刻しちゃってさっき来たところなんだ。僕の場合は眠れなかったんじゃなくて、車が渋滞に巻き込まれちゃってね。こんなことなら電車にしておけば良かったと後悔したよ。でも良かった君を待たせなくて」

・・・

マリエ「明日はいよいよキミノブさんとの結婚式だわ。緊張しちゃう。でもキミノブさんと夫婦になれるのね、嬉しいわ。とにかく大切な日なんだから遅刻だけはしないようにしなくちゃ」
マリエ「す、すみません。寝坊しちゃって、式はまだ始まってませんよね」

式場のスタッフ「えぇ、落ち着いてください。まだ時間はありますから。とにかく今すぐメイクをして、準備を整いましょう。スタッフ総出で行っていますから安心なさってくださいね。それにご主人様も先ほど来られたばかりですので」

マリエ「よ、良かった。とにかく間に合うのね。それにしてもキミノブさんも遅刻だなんてホント私たちお似合いの二人だわ」

・・・

キミノブ「マリエ。それじゃ行ってくるよ」

マリエ「えぇ、あなた気をつけてね。夫婦になって初めての出勤なんだから遅刻しちゃダメよ」

キミノブ「そうだな。僕たちはなぜか大切なときに限って遅刻しちゃうもんな。さてぐずぐずしてる暇はないな。じゃあ行ってくるね」
マリエ「行ってらっしゃい」

・・・

キミノブ「いよいよ明日が出産予定日だ。こうなったらもう無事に生まれてきてくれることを願うばかりだな。それにしても楽しみだなぁ。僕たち二人の子供が生まれるのかぁ。男の子だったら一緒にキャッチボールするし、女の子だったら嫁になんか行かせないぞ」

マリエ「あらあらあなたったら、まだ生まれてもいないのに気が早いわね。でも明日は大丈夫? 仕事抜けられそう?」

キミノブ「大丈夫だよ。朝だけ顔を出してすぐに病院のほうへ駆けつけるから」

マリエ「そうね。私の母や祖母もみんな安産だったって言うし、私もそうだといいわ。とはいえ予定日より遅れるかもしれないし、こればっかりはいつ生まれるかは分からないものね」

キミノブ「そうだね。でもいつ出産になっても必ず立ち会うから。会社にもそれは伝えてあるから安心してくれ」

マリエ「分かってるわ。看護師さんにももし何かあったらあなたの携帯電話に連絡してって言ってあるから」

――出産予定日の三日後
マリエ「お腹が張ってきたみたい。これは陣痛だわ。とにかく病院へ行かなくちゃ。そ、そうだ主人にも連絡をしなくちゃ」

キミノブ『もしもし。どうしたマリエ?』

マリエ「あなた、陣痛が来たみたい。これから病院へ行くから、あなたもすぐに病院のほうへ来てね」

キミノブ『そ、そうか!分かった、これからすぐに病院のほうへ行くからマリエは気をつけろよ』

マリエ「分かってるわ。それじゃ」

病院にて
看護師「大丈夫ですよ、落ち着いて。はい、息を吸ってください、そしてゆっくり息を吐いて」

マリエ「ふぅふぅ。主人はまだかしら?」

看護師「もうすぐ駆けつけてくれますよ。では分娩室のほうに移動しますねぇ」

キミノブ「か、看護師さん、つ、妻はどうなっていますか?」

看護師「大丈夫ですよ。今さっき分娩室の方に移動したばかりです。ではそちらに案内しますね」

マリエ「あらあなた、やっと来てくれたのね」

キミノブ「間に合ったのか! まだ生まれてないんだな? 良かった、間に合わなかったらどうしようかと思ったよ。なにしろ君に連絡を貰ってから、五時間も経ってしまっただろ。こっちに駆けつける途中で事故渋滞に巻き込まれちゃってね」

マリエ「そうだったの? ふぅ」

看護師「いよいよ陣痛の感覚が縮まってきましたね。もうすぐ生まれますよ」

六時間後
赤ちゃん「おぎゃーおぎゃー!」

看護師「生まれましたよ。元気な男のお子様です」

キミノブ「やったー! マリエよくやったありがとう」

マリエ「あなた、無事生まれたのね。良かったわ」

キミノブ「それにしてもマリエの家系は安産家系なのに、時間がかかったよなぁ」

マリエ「そうね。きっと私たちに似て、この子にも遅刻癖があるんだわ」

キミノブ「ははっ、それもそうだな。早速こんなに遅刻してくれちゃって」

赤ちゃん「おぎゃー」