探偵にまつわる謎

探偵:
探偵役ばかりしている人気の俳優

探偵妻:
探偵の奥さん。ちょっと抜けている

息子:
探偵の息子


――崖にて

探偵「あなたが犯人だったんですね」

犯人「あぁ、そうさアンタの言うとおりだ。俺が殺した」

探偵「どうして……」

犯人「どうして……だと!? あいつらが悪いんだ。俺をバカにして、友達の振りをして裏では俺を笑ってたんだ。許せない、友達だと親友だと思ってたのに。あいつらにとって、俺は見下す対象にしか過ぎなかったんだ。だから殺した。俺は悪くない。あいつらが悪いんだ」

探偵「それは違う! あなたの勘違いだ!」

犯人「うるさい! アンタに何が分かる。探偵として名を馳せているアンタに俺の気持ちが分かるわけないだろ!」

探偵「ま、待ってください。ナイフを下ろして! これ以上罪を重ねるつもりですか。お願いです、自首してください!」

犯人「アンタさえいなくなれば、俺は捕まらない。一人でここに来たのが運のつきだ。死ねぇー!」

探偵「くっ!」

警察「――そこまでだ!」

犯人「く、来るなー。こ、こいつを殺すぞ」

探偵「(今だ!)」

犯人「し、しまっ!」

警察「確保!」

探偵「危ないところでした。ありがとうございます」

警察「いえ、ご協力ありがとうございました」

探偵「一つだけ犯人に言いたいことが」

警察「どうぞ」

探偵「彼らはあなたを見下してなんかいない。むしろ逆です。あなたを見下そうとする者が許せず、ずっと庇っていた」

犯人「嘘だ」

探偵「いいえ嘘ではありません。これを見てください」

犯人「こ、これは?!」

探偵「ご家族から預かりました。大切にしていたみたいですよ。こう話していたそうです。『これは僕の親友が作ったんだ。すごいだろう!』って」

犯人「こ、こんなガラクタをあいつらはまだ持っていたのか?」

探偵「彼らにとってあなたは紛れもなく親友だったんです」

犯人「そ、そんな俺は。俺はなんてことを……。あっ、あ、あああああ!」

探偵「罪を償ってください」

・・・

監督「カーット! いやぁ、良かったよ」

探偵「ありがとうございます。ふぅ、緊張しました」

犯人「どうでした? 俺迫真の演技だったでしょ?」

監督「若造が何言ってやがる」

犯人「へへへっ」

探偵「良かったと思いますよ」

犯人「ほら主役もこう言ってますし」

監督「仕方のない奴だな」

探偵「じゃあ、お疲れ様でした」

監督「おう、みんなよく頑張ってくれた解散!」

・・・

探偵「ただいま」

探偵妻「あら、あなた、あの子見なかった? まだ帰ってきてないの」

探偵「いや、見なかったけど。心配だな探しに行ってくるよ」

探偵妻「お願いね」

探偵「まずはあそこから」

――墓地にて

探偵「やっぱりこんなところにいるわけないよなぁ」

――近所にて

探偵「見ませんでしたか?」

主婦「いいえ見てませんけど。役に立たなくてごめんなさいね」

探偵「いえ、それでは。これで」

主婦「早く見つかるといいわね」

探偵「ありがとうございます」

――崖にて

探偵「一体どこに行ったんだ? あの子は?」

探偵「まさか崖から落ちたわけじゃないよな」

探偵「いや落ちてないな。次はどこを探そうか?」

――路地にて

探偵「いないな。まさか誘拐されたのか? 絶対に犯人を捕まえてやる!」

――家にて

探偵妻「ごめんなさいあなた。あの子今日友達に家に泊まるって言ってたわ。すっかり忘れてたごめんなさいね。さっき連絡したら、友達と一緒にゲームしてたわ」

探偵「……そうか。無事だったら良かった」

探偵妻「本当にごめんなさい」

探偵「今日は疲れたからもう寝るよ」

探偵妻「はい、おやすみなさい」

・・・

探偵「本当にそうなのだろうか? 僕に心配させまいとして、嘘をついているんじゃ? それに今日どころか、昨日から僕はあの子の姿を見ていない。僕の知らないところでとんでもないことが起きているのでは?」

――翌日

息子「お母さんただいま!」

探偵妻「あら、おかえりなさい。楽しかった?」

息子「うん! また泊まりに行きたいなぁ」

探偵妻「今度は友達に泊まってもらっちゃう?」

息子「それもいいなぁ。友達に言ってみるよ」

探偵妻「予定が決まったら言ってね。お母さん腕によりをかけて料理を作るから」

息子「うん!」

探偵「おかえり。無事で良かった。心配してたんだぞ」

息子「どうして?」

探偵「いやなんでもない。今のは忘れてくれ」

息子「お父さん変なの」

探偵「こらこら」

息子「へへ」

探偵妻「はいはい、早く荷物を置いてらっしゃい」

息子「はーい」

・・・

探偵「今日は久しぶりの休みだ。家族サービスでもしようかな」

探偵妻「あら! じゃあ化粧しないとね」

探偵「今のままでも十分キレイだよ」

探偵妻「だったらメイクをすれば、よりキレイになるってことね!」

探偵「まぁ、そういうことになるかな」

探偵妻「どこに出かけるか決めてね。用意しておくから」

探偵「分かった。僕も準備しておくよ」

・・・

近所の主婦「――そういえばあの人、子供見なかったかって言ってたけど、確か数年前に事故で死んだんじゃなかったかしら?」

・・・

探偵は部屋でいそいそと出かける準備をしている。探偵の準備の音以外は聞こえてこない。静けさに包まれている。――なぜならこの家には探偵一人しかいないのだから。

・・・

友達の母「ねぇ、聞いて。昨日ね。あの俳優さんから電話がかかってきたの。息子を見なかったかって。でもね変なのよ。あの人なぜか――女の口調だったのよ」