宇宙人出張サービス

冬のある日、ネット通販大手サイトomozonに新サービスが誕生した。

その名も「宇宙人出張サービス」である。

エイプリルフールでもあるまいし何の冗談だよと思いながらネタで注文した内山青年の家に、翌日大きな段ボールが到着した。

開封すると、中には宇宙人が入っていた。

宇宙人「やあどうも、宇宙人です」

内山「え…マジで?」

宇宙人「残念ながらマジです。あ、領収書とかって要ります?」

内山「いや、要らないけど…」

宇宙人「そうですか。ならレシートだけで失礼します」

内山「てか…本当に宇宙人なんだ? すごい絵に描いたようなビジュアルだな…」

宇宙人「まあそうですね。こう見えて私、ベテランの宇宙人なんですよ」

内山「へえ…てか見た目から年齢とか良くわかんないんだけど」

宇宙人「おやおや、年齢を聞くなんて失礼じゃないですか? レディに向かって」

内山「女だったの!!?」

宇宙人「そうですよ、失敬な。で、私は一体何をすればいいんですか?」

内山「何をって…」

宇宙人「出張サービスを利用されたということは、何かやって欲しいことがあるんですよね? 例えば料理を作って欲しいとか、宿題をやってほしいとか」

内山「宇宙人じゃなくてもできそうな内容だなそれ…」

宇宙人「とにかく何か言ってもらわないと困ります」

内山「そ、そうか…じゃあどうしよう。とりあえずSNSに写真アップしたいから一緒に写真撮ってもらっていいかな?」

宇宙人「わかりました。じゃあ化粧するので5億年ほどお待ちください」

内山「5億年!!! 死んでるよ俺!!!」

宇宙人「じゃあ無理ですね」

内山「化粧しなきゃいいじゃん!」

宇宙人「レディに向かってそんなこと言うなんて失礼ですよ。ネットにすっぴんを晒されるなんて生きていけません」

内山「なんだよそれ。じゃあいいや、メシでも作ってよ。それをSNSにアップするわ」

宇宙人「食事ですね。どんなものがお好みでしょうか」

内山「そうだなあ。やっぱ肉だな、肉!」

宇宙人「かしこまりました。じゃあ新鮮な肉を調達してきますので、少々お待ちください」

内山「おいおい、金もないのにどうやって調達すんだよ?」

宇宙人「まあちょっとばかり肉付きの良い男性に眠ってもらってですね…」

内山「人を殺す気かよ!!! やめろ馬鹿!!!」

宇宙人「じゃあ無理ですね」

内山「冷蔵庫に肉あるから適当にそれ使ってくれよ!」

宇宙人「嫌です。私は本格料理しかしません。よって食料の調達も自分でやらないと気が済みません」

内山「くっそ…人間より使えないな。宇宙人ってもっとこう、すごい力があったりするもんじゃないのか?」

宇宙人「勿論、人間には想像もつかない力を我々は持っていますよ」

内山「おっ、あるんだ? それよそれ、それを待ってたのよ」

宇宙人「あなたは私の特殊能力を見たいのですね?」

内山「そうそう! そういうの頂戴!」

宇宙人「分かりました。ではほんの少しだけ披露しましょう」

内山「うひょ~どんな力だろ!? 楽しみだぜ!」

宇宙人「良いですか? いきますよ…」

内山「ごくり…」

宇宙人は気合を入れると、全力で両方の目を寄せた。

宇宙人「どうです、すごいでしょう?」

内山「……あの、ごめん。何それ?」

宇宙人「勿論、究極の寄り目です。人間の限界値を遥かに越えた寄り目ですから、我々宇宙人にしかできません」

内山「確かに目が寄りすぎてて若干気持ち悪い感じになってるけどさ…てか、そうじゃないでしょ。なにその能力? どういうとき使うの?」

宇宙人「主に過酷な状況から目を逸らしたい時などです」

内山「だったら目ぇ閉じろよ!!」

宇宙人「目を閉じると瞼を開閉する労力がかかるでしょう?」

内山「寄り目にする方が労力使いそうだけどな!」

宇宙人「まあともかくこれで我々の驚異のパワーを理解して頂けたと思います。さて次は何しましょう?」

内山「ちっ、あまりに酷い能力すぎて写真撮るの忘れたぜ。じゃあもう何か面白いことやってよ。SNSに上げたらバズりそうな奴」

宇宙人「バズる? それは何ですか?」

内山「一気に盛り上がるってこと。つまり俺が話題になればいいのよ」

宇宙人「なるほど。あなたは有名になりたいのですね」

内山「そうそう! 話が早いな」

宇宙人「だったらとても良い案があります」

内山「なになに!?」

宇宙人「それをすればあなたは一気に有名になりますが、その代わりかなり大変なので覚悟が必要です。どうですか、やってみますか?」

内山「そりゃ勿論! だって有名になれるんだろ?」

宇宙人「はい、そうです。そしてあなたは皆からチヤホヤされるでしょう。しかもお金までもらえます」

内山「有名になって更に儲けられるの!? 一石二鳥じゃん! いいね、それ」

宇宙人「では決定ですね」

内山「おう! で、何をどうするんだ?」

宇宙人「まずは私が特殊な能力を使います」

内山「特殊な能力って…まさかさっきみたいに下らない内容じゃないだろうな?」

宇宙人「そんなことはありませんよ。というか、さっきの能力もかなりの特殊能力なのに馬鹿にしないでください」

内山「はは、悪かったって。じゃあ早くやってくれよ」

宇宙人「わかりました。では…」

宇宙人は内山青年に向かって手を翳(かざ)した。

すると内山青年の体は眩い光に包まれ、あっという間に驚くべき変化が起こった。

宇宙人「見事成功です」

内山「? 一体何がどうなってんだ? 何が変わったのかよく分かんないんだけど」

宇宙人「でしたら洗面所に行ってみてください」

内山「洗面所?」

言われたまま洗面所に向かった内山青年は、そこで自分の姿を見て絶叫した。

内山「なんだよこれは!!?」

宇宙人「どうです、気に入りました? 私とお揃いですよ♪」

内山「お揃いですよ♪ じゃねーよ! 何じゃこりゃ! まるで俺が宇宙人じゃないかよ!」

宇宙人「失敬な。宇宙人みたいじゃなくて、宇宙人です」

内山「は?」

宇宙人「あなたは立派な宇宙人になりました」

内山「お前なにいってんの…?」

宇宙人「我々の特殊能力によって、あなたは我々の星でも生きていられる体になったのです。まあその代わりこの地球に住むにはちょっと都合悪い体になりましたけどね」

内山「ふざけんなよ! こんないかにも絵に描いたような宇宙人の姿になったら、もう俺どうしたらいいんだよ!?」

宇宙人「何言ってるんですか。これであなたも今日から有名人ですよ」

内山「有名人もなにも、このままじゃ俺だってことが分からないだろうが!」

宇宙人「そんな名前なんて捨てればいいじゃないですか。そんなものがなくても有名人になれるんですから」

内山「どういうことだよそれ!?」

宇宙人「さ、私と一緒に行きましょう」

内山「行くってどこに!?」

宇宙人「omozonの配送センターですよ」

内山「は? なんでそんなところに…」

宇宙人「行けばわかりますよ。有名になれて、ちゃんとお金ももらえますから」

そうして内山青年だった宇宙人は、omozonの宇宙人出張サービスに登録された。

宇宙人になった彼は多くの人に利用されたので、多くのお金を稼ぐことができた上、皆がSNSに写真をアップしたものだから自然と有名人にもなった。

彼はとっても満足だったが、一生人間に戻ることはなかった。

そんな過酷な状況から目を逸らすべく、たびたび究極の寄り目をする彼であった。

END