【シスコン】世にシスコンの種は尽きまじ

俺:
晴也。3人兄弟(兄一人妹一人の真ん中)

妹:
薫。3人兄弟の末っ子

長兄:
将。3人兄弟の一番上


うちの兄貴の場合、俺から見てもかなり格好いい部類に入る。いや認めるのは癪だけど、事実は事実なんだ。
2歳違いなんで、小学校から中学校現在の高校に至るまで一緒の学校に通っていれば、まあ達観も出来ると言うものだ。兄貴のファンクラブも、小学校の頃からあるのは知ってたし、兄貴だって一応公認はしてないようだがまあ仕方ないし面倒だし、ってんでファンクラブの存在を認めてる。
そのメインメンバーは、小学校の頃からの追っかけだから年季も入ってるってもんだ。
とまあ、中々に誇れるけど結構うざったい兄貴を持った俺としては、適度に目立たず兄貴へのラブレターは一切受け取らず、その他兄貴に関することは学校内でも放課後でも聞く耳持たずを貫いてきた。
臆病だとか言いたい奴は言え、これは立派な処世術ってもんだ。

さてその問題の兄貴だが、勿論成績はトップクラス。そろそろ佳境に入り始めた大学入学試験にしても、予備校学校両教師のお墨付きで楽勝と言う予想が出てる。まさに順風満帆、向かうところ敵無しの嫌な野郎なんだが。
これまた弟の特権と言うか、出来れば知りたくなかったある事実を俺はしっているのだ。
あの出来のいい、文武両道大人にも同級生にも下級生にも、その辺のワンコニャンコにも受けのいいあの兄貴。

実は、極度のシスコンであることを。

俺がそれに気が付いたのは、てかなんか変だなと思ったのは小学2年の頃だった。これまた2歳離れた妹の薫が、ピカピカの1年生になる予定の頃。
そりゃあ勿論、同じ小学校に入るわけだしそこまでいいお兄ちゃんやってた兄貴だから、薫のランドセルがどうのとか筆箱の柄がとか、口を出してもまあ当たり前かなと思ってたんだが。
ついに薫の小学校デビューの日に至って(俺は3年になっていた)、お手て繋いで家を出たってのはまあいい、親の手前いい兄ちゃんをアピールしたんだ、と俺も思った。
がしかし、その後学校につくまで兄貴は薫の手を離さず、挙句薫のクラスまでしっかり送り届け、予冷が鳴るまで薫につきっきりだったと聞いた時には、「おい兄貴、それってどうよ」とか心の中で突っ込みを入れたものだ。
とは言え小学3年生の身では、シスコンなどと言う言葉も知らなかったし、兄貴がそんな人種だとも思いもよらなかったのは、仕方ないと思っていただきたい。

そして事件は起こった、薫が入学して1週間ほど経った時の事だった。
その日薫は、かなりたくさんの宿題を抱えて帰宅した。勿論と言っては何だが、兄貴と一緒にだ。家に帰るまで宿題の量に兄貴が気付くはずもなく、だが何時もの様に薫と遊ぼうとした兄貴が、宿題が原因で遊ぶ時間が無いと知った時。
その時の兄貴は、妹の手前は「頑張れよ」とにこやかにしていたものの、薫の部屋を出た途端(また運悪く俺はその場に丁度居合わせたんだ)般若の形相になった。でもって足音も荒く、家を出て行った。
後で聞いた話だが、薫の担任に直談判に行ったと言う。勿論宿題の多さを、小学1年生にあの量はいくら何でも非人道的で云々と、理路整然と抗議したそうで。まあ優等生の面目躍如とも言える。

そんなこんなで、俺はとにかく兄貴と薫の近くにはできるだけよらないようにすると言う、自己保身のスキルを身に着けた。側に寄らなきゃ、とばっちりを食うことも無い。下手に薫と2人で話したりしていて、後であの般若の顔を向けられると言う怖さは、回避したいと瞬時に学んだからだ。
小学3年生でそれを学ばされた俺は、正直かなりの不幸ものだと思う。

さてこの兄貴のシスコンぶりは、妹の薫にとっては「優しいお兄ちゃん」と受け取られ勿論非常になついて・・・・いたんだ、小学校の真ん中あたりまでは。
がしかしそのくらいの年齢になると、ちょっと自分の兄が友達の兄弟とは態度が違い過ぎるってのに、どうやっても気が付いてしまう。
で、ある日。
「ねえはるちゃん(俺の事ね、晴也)、お兄ちゃんってシスコンなの?」
まっすぐ聞かれた俺の心中を察してくれ。実はその時中学に入ったばかりだった俺は、その頃初めてその単語を知ったばかりだったんだ。うん、ライトノベルでさ、そういうタイトルのがあって。まさかまだ小学生の薫が、そんな単語をすでに知っているとは。
「ああ、まあ・・・・何だ、そういう見方もあると言う事で」
口の中でごにょごにょとつぶやく俺に、
「そかあ、やっぱりそうなんだ」
嬉しそうに笑顔になる薫。

ちょっと待て、お前シスコンの兄貴がいて嬉しいのか、そうなのか?
「よっしゃ、賭けは私の勝ち」
賭け?
「うんクラスのみんなで賭けたのね、お兄ちゃんがシスコンなのかどうなのか。だってさあ、今でも学校の送り迎えしてるし、休みの日には私のスケジュール優先だし。これってシスコンだよねって子と、いや単に妹を大事にしてるだけって子に分かれたのよ」
う、しまった兄貴すまん。ただ単に妹思い、と言っておけばよかったのか。
「しかし何だね、男の子って単純だよね。シスコンのはず無いっていうのはみんな男の子なの、あんなに格好のいいお兄ちゃんがシスコンなんて変態のはず無いって」
兄貴すまん、もっかいすまん。変態まで行ってしまった。
「なので私たち女の子の勝ちなのよ賭けは、だから次の1週間は男の子の給食のデザートは私たちのもの」
うわあ、すまん。同級生の男子諸君、すまん。
「でもって、そっかあ。シスコンだってことは、ふふふ」

そして数年、未だにシスコンを自覚していない兄貴は、しっかりとシスコンを逆手にとった薫にいいように振り回されている。だが当人は非常に幸せそうなので、俺の口出しすることじゃないが。
この先薫のBFとか出来たら、どうなるんだろうかと・・・・いやいやいや、考えまい。