【シスコン】ずっとずっと愛してるから

ユミ:
主人公。

ミカちゃん:
主人公ユミより3つ年上の女性。

ソウくん:
ミカちゃんと同級生。


「あのね、ユミ。私、プロポーズされちゃった。結婚する!」
満面の笑みで告げてきたミカちゃんの言葉に、コーヒーを飲もうとした手が止まった。
「ソウくん……と?」
質問する声がふるえる。
「うん!」
って、うれしそうに答えるミカちゃん言葉に、わたしは思考が停止した。

ソウくんは幼馴染だ。
ミカちゃんとソウくんと、わたし。
3人は小さいころからいつも一緒で。
それが続くと思ってたんだけど……。
3年前、ミカちゃんとソウくんが付き合い始めた。

ショックだった。
ずっとずっと好きだったから。
2人が付き合うのは、まだ我慢できたけど、結婚はイヤ。
結婚だけは、させたくない!

「おめでとう、ミカちゃん」
と祝福を言いつつも、わたしの思考は好きな人を取り返すことでいっぱいだった。

***

トゥルルというコールが3回。
続いて聞こえてきたソウくんの声に、わたしは冷静に返事をした。

「久しぶりだね、ソウくん。聞いたよ。結婚するんだって。おめでとう」
「おう、ユミ、元気だったか? そうなんだよ。今、結婚式の準備でバタバタしててさ……」
「大変なの?」
「まぁ、いろいろと面倒だな。覚悟はしてたけど、ここまでつらいとは思わんかった」
「つらいって……」

結婚に似つかわしくない言葉に突っ込むと、ソウくんはハハっと小さく笑った。

「あのね、ソウくん。わたし、失恋したんだ」
「えっ!? 相手、誰よ?」
「う~ん……、内緒」
「ってことは、俺の知ってるやつだ」
「あっ、その……。あ、あのね、ソウくん! つらいもの同士、今晩食事でもしない?」

勇気を出して、誘ってみる。
心臓がバクバクする。
でも、好きな人を取り返すために……。

「おう、いいよ。じゃあ、デートってことで。精一杯可愛くしてくるんだぞ」
「うん!」
茶化すようなソウくんの口調に、かぶせる勢いで返事をした。
ハハハと笑うソウくんの声が聞こえた。

***

19時30分。
淡いピンクのスカートで待ち合わせ場所に立ったると、ポンと肩を叩かれた。

「おう、お待たせ」
ソウくんの声に振り返る。
「ううん。今来たところだから、全然待ってないよ」

笑顔で答えると、ソウくんも笑顔を返してくれた。
頭をポリポリかきながら、ソウくんが言う。

「なんか、こう……、照れるね」
「なにが?」
「ユミに会うの久しぶりだし。その……、すんげぇ可愛くなってるし」
「えっ?」
「可愛いって言ってんの」
「あ、ありがとう」
「お世辞じゃないから」
「……うん」

ソウくんの言葉に、知らず知らずに頬が熱くなった。

「じゃあ、食事に行きますか」

言いながら、ソウくんが手を差し出す。
いつもはミカちゃんが握っている手だと思いながら見ていると、ヒョイっと左手をつかまれた。

「はい、つらいもん同士、仲良く手つないで行くよ」

有無を言わさないような言動に、ソウくんを見あげてみる。
ソウくんの頬が、少し赤くなっていた。

食事のあとにお酒を飲んで、ソウくんと2人、近くの公園をブラブラ歩いた。
キスをして、ホテルに行ったのは、とても自然な流れだった。

***

「ソウくんが浮気してるかもしれない」
ミカちゃんの言葉に、わたしの鼓動がはねた。
「そうなの?」
「うん。最近、『忙しい忙しい』ばっかりで全然連絡をくれないの」
「本当に忙しいんじゃないの? 結婚式の準備もあるでしょ?」
「そうだけど……」

ミカちゃんの目に、うっすらと涙が浮かぶ。
その姿に、わたしの心臓はキリキリと痛んだ。

「大丈夫だよ、ミカちゃん」

泣き出しそうなミカちゃんを、そっと抱きしめる。
あたたかい。
柔らかい。

「ユミ……」

ミカちゃんも、わたしに抱きついた。
その瞬間、愛おしい気持ちがこみ上げる。

大好き。
大好き。
大好きだよ、ミカちゃん。
ずっとずっと、子どものころから、ミカちゃんだけが好きだった!

ソウくんなんかには渡さない。
結婚なんか、させないから!

「ミカちゃん。わたしはずっと、ミカちゃんのそばにいるから。ずっとミカちゃんと一緒にいるから!」
「ユミ、それ……。プロポーズみたい」

泣きながら笑うミカちゃんは、すごくすごく綺麗だった。

「プロポーズって思っても、いいよ」
「えっ?」
「少なくとも、わたしはソウくん以上にミカちゃんが大切だから。好きだから」
「ありがとう、ユミ」

わたしの腕の中で泣き笑うミカちゃん。
その髪に、ばれないようにキスをした。

***

1か月後。
母さんから電話が来た。
やけに取り乱した様子で、ミカちゃんとソウくんの婚約破棄を伝えてきた。

「3年も付き合ってたのに、ソウくんが婚約中に浮気してね……。婚約って、人生で1番幸せな時期だってのに、ひどいわね。許せないわ!」
「まぁ、結婚する前でよかったんじゃない?」
「そうだけどさ!」
「ミカちゃんは? 元気?」
「うん、元気だよ。っていうか、ユミ。『ミカちゃん』って呼ぶの、やめなさい。実の姉妹なのに変でしょ。『お姉ちゃん』とか『姉さん』って呼びなさいって、あれほど言ってるのに……」

呆れながら言う母さんの言葉を、わたしは適当に受け流した。

いやよ。
お姉ちゃんなんて、絶対呼ばない。
だって、ミカちゃんが好きだから。
ミカちゃんだけを、ずっとずっと愛してるから。