【シスコン】【ブラコン】石焼きボンバーズ~狙われたホープダイヤモンド~

とびろう:
石焼きいも屋、シスコン

ちるみ:
極度のブラコン


「い~しや~きいも~やきたて~っ」

あーあ、今日も売れねえや。毎日毎日電卓弾くのに疲れたからって石焼きいも屋になってみたけど何だか上手くいかんなー。なんでだろう。

「お兄ちゃんお疲れ様! 一本ちょうだい!」

「ばっか、お前これ商品だぞ…まあいいか。ほらよ」

「ありがとう! はふっはふっあまーい」

ちるみはいつも俺にくっついてくれるけど学業の方は大丈夫なんだろうか。今は平日の真昼間というか具体的には午前11時なんだけど小学校にちゃんと行っているのか心配だ。再婚した両親に押し付けられたが正直面倒見きれる状況じゃない。というか俺の面倒を誰かに見て欲しい。それにしてもかわいいなちるみ。

「ねえお兄ちゃん」

「なんだいちるみ」

「ちるみもお兄ちゃんのお手伝いしたいな」

「しかしお前は小学生だから学校行くべきだろう」

「いいの! 私は学力社会というハリボテから抜け出したいの。ねえお願いお兄ちゃん」

「しっかたねえなあ」

「ありがと! 大好き!」

正直なところ人手は足りているけどちるみを一人にはしておけんし、何より喜んでいるんだからいいか。本来なら「学校に行かんかこのバカチンが!」というところだろうがまあいいだろう。良くわからんけどどうにかなるさ。というかかなり心がまいっていたので側にいてくれてすげえ嬉しい。

日に日に売上は伸びていった。ちるみの吹き込んだ「い~しや~きいも~」の音声につられて客足も伸び、接客すれば誰もが笑顔になる。一人でやっていたころより遥かに売上が伸びた。ちるみ様様である。

「なあちるみよ、欲しいものはあるか」

「えー? 別に無いけど」

「いや何かあるだろう。結構金溜まったから何か買えるぜ」

「じゃあ、ホープダイヤモンドがいいな」

「なにそれ」

「えへへっ。綺麗で昔っから欲しかったんだ」

「ふーん」

家に帰ってホープダイヤモンドについて調べてみた。『ホープダイヤモンドとはスミソミアン博物館収蔵の2~2.5億ドルのダイヤモンドです』そうですか。なるほどね。ちるみはバカなんじゃないだろうか。いや、バカなのは俺のほうか。やる前から諦めていてどうするんだ。必ず俺はホープダイヤモンドを手に入れてちるみを喜ばすぞ。その意気込みが大事なんだ!

早速俺はアメリカへ渡った。ちるみには1ヶ月程アメリカに石焼きいも屋の研修に行くと言って日本に置いてきたが仕方無い。さあまずはスミソミアン博物館の下見から行こうとしよう。石焼きいも屋のフリをしていれば怪しまれることもあるまい。今日のために特注した手押し石焼きいも機を活用するときは今しかない。

「おにーいちゃんっ」

「うわっ。ちるみ、お前なんで機械の中に…」

「ひどいよ私を置いていくなんて。それにこれ、研修じゃないでしょ」

「はあ、バレちまったらしょうがないな。そうだよ。ホープダイヤモンドを盗むのさ」

「それって私のため?」

「ああそうさ、なぜならお前がめっちゃ好きだから」

「嬉しい! 協力するよ、お兄ちゃん」

こうして兄妹の石焼きいも屋兼盗賊という不思議な家業が誕生した。

流石、世界に名だたるスミソミアン博物館だ。警備は厳重で赤外線センサーは縦横無尽に張り巡らされている。一筋縄ではいかない。思案していると忍者装束に身を包んだちるみが言った。

「ねえお兄ちゃん、あのセンサーって石焼きいもの機械で壊せるんじゃない?」

「むう、どういうことだい?」

「石焼きいもって赤外線で温めるでしょ。だからあの赤外線センサーに当てれば狂うと思うのよ」

「なるほど…しかし根拠はあるのかい?」

「無いわ。直感よ」

「そうかあ」

俺はちるみの直感を信じることにした。愛する妹の直感は結構正しいからだ。さて、石焼きいもの機械の蓋を開いてセンサーに当ててっと。

「ビーッ! ビーッ! 侵入者を発見しました!」

「なにっ。ちるみ、これは」

「だめだったみたい…ごめんねお兄ちゃん」

「いいとも、人生には間違うことも必要さ」

「ありがとう…だからお兄ちゃん大好きっ」

「おいおいこんなところで抱きつくなって、ははっ」

いも焼き機械のセンサーは間違ったが俺たちの愛は間違わない。それだけは確実だ。おっと、警備員がやってきやがった。

「両手を上げて出て来い! さもなくば撃つ!」

「ちるみ、やるぞ」

「はい、お兄様!」

「う、うわあっ」

俺たちは石焼きいも屋として修練を積んできた。長時間の運転により腰の筋肉が異常に発達しプロパンボンベを運ぶ両腕は鉄塊のような筋肉を湛えている。センサーには弱いが警備員程度にひるみはしない。

「焼かれたいか! ふかされたいのか! それとも今日あったことを全て忘れて生きていたいか!」

焼きいも屋で培った口上の効果はてきめんで、警備員は縮み上がった。

「生きていたいです!」

「仕方無いですわね、お兄様。生かしてさしあげて」

なぜか悪役のような口調になったちるみ。ノリか。ノリなのかちるみ。

「運が良かったな貴様ら! お嬢様のお慈悲に感謝しろ! では、そろそろ」

「そうね。散っ」

「散っ」

こうして今夜の仕事は終わった。

暗い夜道を奇妙な充実感を引き連れてモーテルへと帰る最中、ちるみと話がしたくなった。

「…ちるみよ、ホープダイヤモンドは無理だったな」

「そうだね。でも何だかわくわくした」

「失敗しちゃったけど楽しかったねえ」

「うん…そもそも私、本当にあのダイヤモンドが欲しかったわけじゃないし」

「へっ?」

「私はおにいちゃんの頑張る姿が見たかったの。すっごい格好良かったよ…」

「ちるみ…お前の突然のお嬢様口調も良かったよ。ノリ分かってんなあって感じがして」

「おにいちゃん…」

「ちるみ…け、結婚しよう」

「はい…」

「次の挑戦者は…石焼きボンバーズだ!」

「うおおお!!」

あれから俺たちはアメリカの地下闘技場で「石焼きボンバーズ」としてタッグを組んで戦っている。力こそ全てというアメリカの考えには賛成だ。

「対するは…アメリカ農家の誇り! アイダホポテトーズ!」

「うおおおお!!」

ふかし芋販売で売り出し中のアイダホポテトーズか…相手にとって不足は無い。

「試合開始は5分後だ!今のうちに便所に行くかベットしな!」

「アイダホに5千…いや、石焼きに5万ドルだ!」

「俺もだ! 俺も!」

「お兄ちゃん、そろそろ試合だよっ!」

「おう」

「相手強そうだけど、私達勝てるよね」

「ああ、ちるみさえ居れば俺は無敵だよ」

「私もお兄ちゃんが側にいるなら何でもできる」

チュッ。

「青コーナー! 赤外線の申し子! スイートポテトになりたい奴はどいつだ!? 石焼きボーンバーーズ!!!!」

「うおおおお!!!!」

「じゃあ…いくぜ!」

「はいっ!」